「ジュエリーアイス」を商標登録し、企業の独占を予防した豊頃町。弁理士の熊野彩さんにその意義を聞く


十勝エリアにある豊頃町の冬の風物詩「ジュエリーアイス」を、町が特許庁に商標登録を出願。審査合格にあたる「登録査定」を受けて、正式に登録されたというニュースを北海道新聞が伝えました。

記事によれば、十勝管内の菓子製造会社3社が先に出願していたことなどから、一時は登録を認めない「拒絶」とされていたそうです。しかし、町では「以前から観光PRで積極的に使用し先願権もある」とした意見書を特許庁に提出。今回、審査の結果、認められるかたちになりました。

豊頃町の担当者は「ジュエリーアイスの呼称をなるべく自由に使ってもらい、多くの人に名前が広まれば」と話し、「せっかく根付いた名前が特定の企業などに独占されることを予防するために出願した」ことを明らかにしました。

HK・イノベーション・プラザに入居する弁理士事務所「あさかぜ特許商標事務所」の札幌支所長・熊野彩さんにその意義をお聞きしました。

 

▲弁理士の熊野彩さん

 

—今回のニュースを聞いて感じるところは?

熊野●大変よかったと思います。商標登録全般に関心も集まりますし、このような事例が増えて、より正当な権利が守られていけばいいと思います。

しかし一方で、少々懸念も残りました。「これで自由に使えるようになりました」とありますが、権利範囲というのは、自分が指定したサービスとか商品に限定されます。

今回のケースを見てみると、キーホルダーとか身に付けるアクセサリー、お菓子とか、企画旅行の実施などです。こういった範囲内では独占ができます。

しかし、指定した以外はフリーな状態なわけで、そういった意味では、もうすこし範囲を拡大して権利を取得する余地はあったのかも、といった印象を受けました。

 

—独占ではないと?

熊野●そうです。独占だと言う記事ですが、取得できた範囲で言うと、45分野あるうちの3分野です。

 

—大切なことはどんなことですか?

熊野●何も権利を主張しないで「自由に使ってください」とすると少々危険です。だれでも権利を取得できるようにさらされている状態なのです。自由に使ってほしいと思う人が、きちんと権利を取得した上でオープンにしておくことが大切です。

 

—ダメージを受けた実例もあると?

熊野●道内でも、ある自治体が製造・販売する飲料に対して損害賠償を請求されたケースが実際にあります。商品のネーミングについて、先に商標権を取得していた企業から、商品の回収とラベルの張り替え、一定期間に販売された金額に対する損害賠償を求められた事例です。賠償額は数千万円と、高額になる場合もあります。なにより、ブランド名を変えるというスイッチコストは莫大なダメージを受けます。

 

—今回の場合で言うと?

熊野●今回のケースで考えると、例えばですが、もし、東京の旅行会社が「ジュエリーアイス」ということばを旅行商品の範囲で取得していたとします。すると、現在実施している「ジュエリーアイスツアー」という名前のツアーは権利侵害として訴えられてもしかたありません。

今後は同名のツアーを権利者に許可なく開催することはもちろんできませんし、名前を変更することに伴う印刷物の刷り直しといった余計な費用がかかります。

過去にさかのぼって、損害賠償も請求されてしまいます。

 

—ではどうすればいいのでしょうか?

熊野●トラブルを発生させないためにも、企業や自治体の担当者は商標をしっかりと登録しておくことをおすすめします。

商標権は、10年間、日本国内全域で自社の名前なり店名や商品・サービス名が守られる強い権利です。

ぜひ、今すぐ弁理士に相談してください。

 

 

 


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